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字幕の初仕事、とりあえず終了

昨夜は台風接近のニュースに怯えながらも東京文化会館で3回目の「魔笛」鑑賞(検証)。

ここのところ字幕のことをつらつら書き流しているのは、自分の備忘録も兼ねてなのだが、今回は舞台そのものについての感想を少し。

全体に、はっきり言ってしまうと日本人の歌手の方が歌も演技も上手だし、発音も正確。プラハの彼らは、良く言えば「肩の力が抜けた」演奏であるが、一人一人が自分なりに人物像を練り上げて演じているようにはあまり感じられなかった。だからといってそれがダメと言いたいわけではない。たぶん「魔笛」というおとぎ話は彼らにとってあまりにも身近なために、わざわざ再考して本を読み込んで一語ごとの意味を考えて音楽に向き合う、という姿勢にはならないのかも。たとえていえば、日本人が「桃太郎」のお芝居をするような?あるいは「仮面ライダーショー」の演出を考えるみたいな?……違うか。

単に歌や芝居が身体に入っていなかっただけかもしれない。12日のモノスタトスはずっとやや下目遣いでオケピットの中(?)あるいは指揮者(?)を注視して歌っていたし、13日のタミーノは「受け身にもほどがあるわ!」と言いたくなるような棒立ちで「なんでエネルギー節約してんねん?!と時々もどかしくなるほど「おっとり」した仕草だった。
その点、15日のパパゲーノとパミーナはこれまで観た2回に比べると息が合っているようだったし、表情とか仕草を打ち合わせて演技しているんだな、というのがわかり、ある意味安心して観ていられた。(というか、私自身が3回目の観劇で、細かいところにやっと気づけるようになったのかもしれないが。)ただしパミーナは私の好きな役だけに、いろいろ注文をつけたくなった。もっとメリハリのきいた演技、歌唱を見せてほしかった。特に、タミーノを失ったと思い込んで正気を失っている場面の歌い方。もっと単調に、魂の抜けた空虚感の感じられる歌い方をして、地面から両足が3センチばかり浮いている感じ(→この形容はパクリです、分かる方には分かる)で歌って、タミーノとの再会を喜んでいる若々しい娘の生き生きとした場面との差をくっきりと見せてほしかったな。
宣伝の時から一番の売りになっていた「夜の女王」エリカ・ミクローシャ。私が観た3回のうち、2回は彼女が出演した。もともと陸上の選手だそうで、なるほどまっすぐでスピード感あふれる歌唱。この役柄はもともと「人間であって人間でない」常軌を逸した感じで突っ走っていていいのかもしれないけれど、一幕で娘パミーナを失った悲しみを歌うところでは、もう少し影のあるというか、深い悲しみが伝わる表情(声の)が欲しかったところ。

さて、以下は字幕に関する自分用記録。

なぜか、先日見たのとビミョーに違っている表記を発見。しかもそこは結構自分で気に入っていた箇所で、優れた感性の持ち主である(と私は決めつけている)O下さんも「気に入った」と言ってくれていた箇所でもあるので、やっぱり「修正してください」と字幕操作の人に依頼メールを送る。その他にも色々、歌手の演技を見ていると「こうした方が合う」と思える箇所が出てきてしまったので、それらも全部お伝えする。

翻訳は一度提出したらつべこべ言わないのがケジメなのかもしれない……でも、違うと思っていながら、そのままお客様に提供するわけにいかない……またウジウジ、でも気にかかる。伸ばす音の「ー」が一つ入っているかいないか、だけの違いだったのだけれど。なんだろうな、自分のこのこだわりよう。うじっぱり、とでも名付けるか。

字幕を実際に入力して作業している人にしてみたら、単に入力し直すだけの簡単なことなのか、それとも「うるさいなー」と面倒なことなのか、それさえ検討がつかないのだけれど、帰宅して夜中までかかって気になったところを全部スコアと再度照らし合わせ、とりあえずお願いすべきことはすべてお願いした。

ツアー自体は月末まで続くが、私が今回の「魔笛」を観ることはない。次回、このテキストを使っていただける時があれば、また実際の舞台を見た上で調整させていただきたいな。

by oliva16 | 2013-10-16 15:26 | しごと